餅イレウスとは、「餅を原因として腸閉塞(イレウス)を起こす病態」で、毎年正月前後に医療機関で報告される消化管トラブルです。
お餅は消化が良い食品と思われがちですが、食べ方や体調、消化機能の低下によっては腸に詰まり、手術が必要になることもあります。
本記事では、
- 餅イレウスとは何か
- なぜ起こるのか(メカニズム)
- どんな人が注意すべきか
- 日常でできる具体的な予防策
を、分かりやすく解説します。
餅は正月の定番だが「のど詰まり・腸閉塞」のリスクもある
正月に増える餅による健康事故
お餅は正月に欠かせない日本の伝統食ですが、消費量が急増する1〜2月に健康被害が集中します。
特に有名なのが「のどに詰まる事故」ですが、実は消化管で起こるトラブルとして「餅イレウス」も毎年報告されています。
公的データ
- 東京消防庁「餅による窒息事故」によると、正月三が日に高齢者を中心に多数の救急搬送が発生
- 医学論文では、正月明けに腸閉塞として受診し、CTで餅が原因と判明する症例が複数報告
※のど詰まりだけでなく、飲み込んだ後もリスクが残る点が重要です。
消化に良いはずの餅でも「餅イレウス」になる理由
餅は本当に消化に良いのか?
一般的に餅(もち米)は「消化が良い」と言われますが、これは十分に噛み、少量ずつ食べた場合の話です。
餅の特徴
- 主成分はデンプン(アミロペクチン)
- 加熱直後は柔らかいが、体温付近で粘着性が高い
- 冷えると再び硬化しやすい
この性質により、噛まずに飲み込むと腸内で塊になりやすいという問題があります。
餅イレウスとは何か|医学的定義と位置づけ
餅イレウスの定義
餅イレウスとは、摂取した餅が小腸内で消化・移動できず、腸閉塞(イレウス)を起こした状態を指します。
医学的には「食餌性イレウス(food-induced ileus)」の一種です。
主な症状
- 強い腹痛
- 腹部膨満感
- 吐き気・嘔吐
- 排便・排ガス停止
診断方法
- 腹部CT検査が有効
- CTでは、高吸収域の餅塊が小腸内に確認されることが多い
餅イレウスが起こるメカニズムを解説
なぜ腸で詰まるのか
餅イレウスは、以下の要因が重なることで発生します。
発症メカニズム
- 十分に咀嚼されない餅を摂取**
- 胃酸・消化酵素でも完全に分解されない
- 小腸内で水分を吸収し粘着性を保持
- 腸管蠕動が弱い部位で停滞
- 餅同士が凝集し「塊」となる
- 腸管を物理的に閉塞
リスクが高い人
- 高齢者(咀嚼力・腸蠕動低下)
- 胃切除・腸手術の既往がある人
- 早食い・丸飲みの習慣がある人
- 空腹時に大量摂取する人
餅イレウスを防ぐ方法|今日からできる予防策
餅イレウス予防の基本原則
「小さく・よく噛み・一度に食べすぎない」
これが最も重要です。
具体的な予防方法
① 餅は小さく切る
- 一口サイズ以下に切る
- 丸餅は特に注意
② よく噛む(30回以上)
- 飲み込む前に形が分からなくなるまで咀嚼
③ 水分と一緒に摂取する
- お茶・汁物と一緒に食べる
- 単体で食べない
④ 一度に大量摂取しない
- 空腹時の連続摂取は避ける
⑤ 高リスク者は医師に相談
- 消化管手術歴がある場合は特に注意
まとめ|餅イレウスを正しく知り、安全に餅を楽しもう
- 餅イレウスは毎年正月に実際に発生している腸閉塞
- 「消化が良い」というイメージだけで油断すると危険
- 原因は咀嚼不足と過剰摂取
- 正しい食べ方で予防は十分可能
正しい知識を持てば、餅は安全に楽しめます。
お正月の食文化を守るためにも、ぜひ家族や高齢の方と情報を共有してください。
出典・参考資料(一次・公的情報)
- 日本消化器病学会 編「消化管疾患診療ガイドライン」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「腸閉塞」
- 東京消防庁「餅による窒息事故に関する注意喚起」
- 日本腹部救急医学会雑誌:食餌性イレウス症例報告
- PubMed掲載症例報告(Food-induced ileus caused by rice cake)

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